一人ずつ歌えば問題ないのに、二人で歌うとちぐはぐに聴こえる。デュエットは、上手な二人が並べば成立するものではありません。
息が合わない、交代のところで間が空く、どちらかの声だけが目立つ。デュエットの「合わない」には、いくつかの種類があります。
「合わない」の中身を場面ごとに分けたうえで、三つの合わせ方と、二人での練習の進め方までを書きます。
デュエットの「合わない」は、何がずれている?
多くは音程ではなく、入りと終わりのタイミング、そして声の強さです。
デュエットには、主に三つの場面があります。交互に歌う掛け合い、同じメロディを一緒に歌うユニゾン、違う音を重ねるハモリです。場面ごとに、ずれやすいものが違います。
| 場面 | 合わせるもの | 崩れ方 |
|---|---|---|
| 掛け合い | 受け渡しのタイミング | 交代で間が空く、声がぶつかる |
| ユニゾン | 入り・終わり・母音の形 | 二人の声が別々に聴こえる、濁る |
| ハモリ | 音の間隔、息 | 主旋律につられる、和音が濁る |
ハモリの難しさはハモリが取れない理由で扱っているので、この記事では掛け合いとユニゾン、そして二人の声のつり合いを中心に取り上げます。
二人とも一人で歌うときに崩れないなら、問題は個人の技術ではなく、合わせ方にあります。カラオケでは歌えるのに他の場で崩れる理由で「合わせる相手が機械から人に変わる」と書いた変化が、まさにこれです。
なぜ、息を合わせると歌がそろう?
吸う瞬間がそろうと入りがそろい、入りがそろうと終わりもそろいやすくなるからです。
一緒に歌う人どうしの呼吸は、感覚の話ではなく、計測できる形でそろっていきます。プロの歌い手が声を重ねて歌う場面を計測した研究では、歌っている間は安静時より呼吸と心拍の同期が高まり、体が触れ合う配置では呼吸の同期がさらに高くなりました(出典:一緒に歌うときの心拍と呼吸の同期を計測した研究)。
裏を返せば、呼吸がそろわないまま歌っているうちは、入りもそろいません。デュエットの練習では、音程より先に、二人が同じ瞬間に吸えているかを確かめます。
方法としては、目で合図を送る、同じ拍で吸うと決めておく、前奏の最後の一拍で一緒に吸う、などがあります。歌い出す前の一拍の作り方は歌い出しが合わない理由で扱っています。
交互に歌うとき、受け渡しで何が起きている?
前の人の語尾と次の人の入りが、ぶつかるか、空くか。その重なり方で流れが決まります。
掛け合いで流れが途切れるのは、たいてい前の人の語尾が長すぎるか、短すぎる場合です。語尾が長いと次の人の入りとぶつかり、短いと間が空いて、会話が途切れたように聴こえます。
決めておくことは二つです。前の人がどこで音を切るか、次の人がどこで吸うか。次の人は、前の人の語尾が消えていく間に吸うのが基本です。語尾の切り方の種類はフレーズの終わり方、吸う位置の考え方は息継ぎの位置の決め方が参考になります。
掛け合いは、会話に近いものです。相手の言葉を聴いてから返すように、前の人の語尾を最後まで聴いてから入る。この順序が崩れると、二人がそれぞれ別の歌を歌っているように聴こえます。
ユニゾンが、一つの声に聴こえないのはなぜ?
音程のわずかな差に加えて、母音の形と、入りと終わりのタイミングが違うためです。
同じメロディを二人で歌うユニゾンは、一番やさしそうに見えて、実はずれが一番目立つ場面です。二人の声がぴったり重なれば一つの太い声に聴こえ、少しでもずれると二つの声が並んで聴こえます。
音程は、どちらか一人に合わせると決めておきます。二人がそれぞれ「正しい高さ」を狙うと、わずかな差が残ります。基準を片方に置けば、もう片方はその声に寄せるだけで済みます。伴奏なしで二人で歌う場面では、互いが基準になるぶん、下がっていく危険も共有されます。その点はアカペラで音程が下がっていく理由で扱いました。
母音の口の形も、二人でそろえておきます。同じ「あ」でも、口の開き方が違えば響きが変わり、同じ高さでも別の声として聴こえるためです。
声の強さは、どうつり合わせる?
大きいほうに合わせるのではなく、小さいほうに合わせ、山の場所だけを重ねます。
二人の声量が違うと、大きい声のほうに引っ張られて、二人とも張り合う形になりがちです。そうなると喉に力が入り、音程も乱れます。
基本は、声量の小さいほうに全体を合わせることです。そのうえで、盛り上げる場所だけを事前に決め、そこで二人が同時に強くします。強さの頂点が重なると、声量に差があっても一緒に歌っている感覚が生まれます。曲全体の山の置き方は曲の構成をどう歌い分けるかで扱っています。
日本人の聴き手が感じる「ノリ」を調べた研究では、体を動かしたくなる感覚に加えて、一体感の比重がやや高い可能性が示されています(出典:日本音響学会誌)。二人の声がそろって強くなる瞬間は、この一体感がもっとも伝わる場所です。
声質が違う二人は、寄せるべき?
寄せる場所と、違いを見せる場所を分けます。
デュエットの魅力の一つは、二人の声の違いにあります。全部を寄せてしまうと、二人で歌う意味が薄れます。一方で、全部違うままだと、まとまりが出ません。
目安としては、ユニゾンやハモリで声が重なる場所では寄せ、掛け合いで一人ずつ歌う場所では、それぞれの声で歌います。寄せるときは、声の明るさや息の混ぜ方を相手に近づけます。訓練を受けた歌い手ほど声の状態を意図的に切り替え、出せる音色の幅が広い傾向があるという研究があります(出典:Journal of Voice)。寄せる力は、この切り替えの幅の一部です。
声の使い方でどこまで変えられるかは声質は変えられるか、様式に合わせた切り替えはジャンルを歌い分けるにはで扱っています。
二人で練習するときは、何から始める?
歌う前に、吸う場所と交代の場所を歌詞に書き込み、二人で共有します。
- 歌詞を一枚にまとめ、どちらが歌うかを色分けする
- 吸う場所と、交代の場所に印を付ける
- 盛り上げる場所を二人で決める
- 伴奏なしで、掛け合いの受け渡しだけを繰り返す
- 通して歌い、録音して二人で聴く
四番目の受け渡しの練習は、実際に集まる前でも録音を使ってできます。相手のパートを録ってもらい、それに合わせて自分のパートを歌ってみてください。録音を使うときの注意点はレコーディングの歌い方でも扱っています。
最後の録音は、二人で一緒に聴いてください。一人で聴くと自分の声ばかりに耳が行きますが、二人で聴くと、合っていない場所についての意見がそろいやすくなります。聴き方の手順は自分の歌を録音して聴くと何が分かるかにまとめています。
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よくある質問
Q. 相手が走ってしまうとき、合わせるべきですか。
伴奏がある場合は、伴奏を基準にします。伴奏がない場合は、事前に決めたテンポを二人の基準にして、どちらか一人の揺れに引っ張られないようにします。
Q. 男女でデュエットすると、キーが合いません。
二人がそれぞれ無理のない高さに収まるキーを探します。どちらかが苦しい箇所が残る場合は、パートの割り振りを見直すのも一つの方法です。
Q. 一人でデュエットの練習はできますか。
できます。相手のパートを録音するか、原曲の相手のパートを聴きながら、受け渡しと吸う場所を合わせる練習をしてください。
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