表現力・テクニック 2026.06.21 読了11分

ビブラートの出し方、カギは「速さ」と「揺れ幅」の2つ

ビブラートが「なんだかうまくかからない」「揺れすぎて不自然」。そう感じている人は多いです。でも安心してください。ビブラートは、たった2つのこと——「揺れる速さ」と「揺れる幅」——を分けて考えるだけで、ぐっとコントロールしやすくなります。

Vocal Campのレッスンでも、「ビブラートをかけようとすると、声が細かく震えてしまう」「逆に、出そうとすると全然揺れない」という相談はとても多く寄せられます。これは才能やセンスの問題ではありません。仕組みを知らないまま、なんとなく揺らそうとしているだけなんですね。

この記事では、ビブラートの正体から、うまくかからない原因、プロの揺らし方の目安、そして家やカラオケでできる練習の順番まで、できるだけやさしく説明します。

結論:ビブラートのコツは、「1秒間に何回揺らすか(速さ)」と「どれくらい大きく揺らすか(幅)」を分けて練習することです。プロの目安は1秒間におよそ5〜7回。そして大事なのは、力で揺らすのではなく、喉の力を抜いて「ひとりでに揺れる」状態を作ること。この順番をつかめば、自然なビブラートに近づきます。

では、ひとつずつ見ていきましょう。

そもそもビブラートって何?

ビブラートは声を規則正しく揺らす技術で、ポイントは「揺れる速さ」と「揺れる幅」の2つだけです。

「ビブラート」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、中身はシンプルです。声の高さを、ゆらゆらと上下に揺らしているだけ。その揺れを2つの面から見ると、一気に分かりやすくなります。

  • 速さ:1秒間に何回揺れるか。たとえば「1秒に6回」のように数えられます。
  • 揺れ幅:どれくらい大きく上下するか。狭いと「かかっていない」、広すぎると「音程が外れてる?」と聴こえます。

多くの人は、この2つをいっしょくたにして「なんとなく揺らそう」としています。でも、速さと幅はまったく別ものです。料理でいえば「火加減」と「味つけ」くらい別の調整、と思ってください。別々に意識するだけで、コントロールできるようになります。

ちなみに「1秒に何回」という速さは、専門的にはHz(ヘルツ)という単位で表します。むずかしく考えなくて大丈夫で、「1秒に6回揺れていたら6Hz」というだけの話です。

なぜ自然なビブラートがかからないの?

うまくかからない原因のほとんどは、「喉に力が入りすぎている」か「息の支えが途切れている」かのどちらかです。

Vocal Campのレッスンでよく見られるのは、次の2つのパターンです。

1つ目は、喉を締めて、無理やり揺らそうとしているケース。力むと声が細かく速く震えて、いわゆる「ちりめんビブラート(震え声)」になります。

2つ目は、お腹からの息の支えが途切れて、揺れがバラバラになるケース。息が安定しないと、揺れ幅が一定にならず、音がふらついて聴こえます。

そして、ここがいちばん大事なところなんですが——ビブラートは「がんばって揺らす」ものではありません。本当は逆で、喉の力を抜いて、息をなめらかに流していると、声がひとりでに揺れ始めるんです。「揺らそう」と意識するほど力が入ってしまって、かえって揺れなくなる。これがビブラートの面白いところです。

プロはどれくらいの速さで揺らしてる?

プロの目安は1秒間におよそ5〜7回(平均6回くらい)。速すぎると震え声に、遅すぎると「揺れていない」印象になります。

「ちょうどいい速さ」には、ちゃんと目安があります。音楽を専門に学ぶ大学生を複数の大学で調べた研究では、上手な人ほど1秒に5〜7回くらいの速さで揺らしていました(出典:Journal of Voice)。これより速いと震えて聴こえ、遅いと揺れが目立ちすぎて重く聴こえます。

ジャンルによっても少し変わります。ざっくりした目安が下の表です。

ジャンル速さの目安揺れ幅の目安
クラシック(オペラ)1秒に5.5〜7回やや広め(半音くらい)
ポップス・J-POP1秒に5〜6回狭め。フレーズの最後だけかけることも
ロック1秒に5〜7回曲の雰囲気に合わせて変える

もう一つ、面白い研究結果があります。オペラ歌手の歌を分析した研究では、聴いた人の「うまい・心地いい」という印象を左右していたのは、速さよりも”揺れ幅”のほうだったんです(出典:Frontiers in Psychology, 2025)。速さばかり気にしがちですが、じつは「どれくらいの幅で揺らすか」のほうが、聴き手の印象を決めている。練習のヒントになりますね。

ビブラートは、表現力という大きな技術の一部です。歌の表現力の付け方もあわせて読むと、ビブラートをどこで使うと効くのかが見えてきます。

ビブラートの出し方|4つのステップ

「揺れない長い声」を安定させてから、お腹で波を作り、喉の力を抜き、最後に録音で速さを確かめる——この順番が近道です。

いきなり揺らそうとしないのがコツです。土台から順番に作っていきましょう。

ステップ1:まず「揺れない声」を5秒キープ

「アー」と、高さも大きさも変えずに、まっすぐ5秒伸ばします。地味ですが、これがビブラートの土台です。まっすぐ伸ばせない状態で揺らそうとしても、力みが増えるだけ。息がもれない、安定したまっすぐな声を先に作ります。

ステップ2:お腹で軽く「波」を作る

「ファ、ファ、ファ」と区切って歌うと、お腹(みぞおちの下あたり)がポンポンと動きますよね。その動きを保ったまま「アー」と伸ばすと、声に規則正しい揺れが生まれやすくなります。最初はゆっくり、1秒に4〜5回くらいの遅めのペースで大丈夫です。

ステップ3:喉の力を抜く

喉(のどぼとけのあたり)がカチカチだと、揺れが詰まります。「あくびをする直前」の、喉がふわっと広がる感じを思い出してください。その脱力した状態で、ステップ2のお腹の波を加えると、声がひとりでに揺れ始める瞬間が来ます。

ステップ4:録音して「速さ」を数える

スマホで5秒録音して、揺れが何回あったか数えてみましょう。5秒で25〜35回なら、1秒あたり5〜7回。ちょうどいい範囲です。最初は遅め(5回くらい)から始めて、慣れたら少しずつ6回に近づけていくのがおすすめです。

ちなみに、ビブラートは「生まれつき」ではなく、練習で身につくスキルです。訓練によって揺れの速さや幅が変わっていくことは、研究でも確かめられています(出典:Journal of Voice)。今かからなくても、順番に取り組めば変わっていきますよ。

カラオケでビブラートを使うには

最初は「伸ばす音の最後だけ」にかけると、ぐっと成功しやすくなります。

曲のはじめから終わりまで全部にかけようとすると、息の支えが追いつかず、途中で揺れが乱れます。まずは欲ばらず、フレーズの最後の伸ばす音だけを狙ってください。コツは、音を出してすぐ揺らさず、0.5秒ほど待って、声が安定してからそっと揺らし始めること。

  • 伸ばす音の前に、しっかり息を吸ってお腹に支えを作る
  • 音を出した直後は揺らさず、安定してから揺れに入る
  • 喉はゆるめたまま。力んで揺らさない
  • 速くなりすぎたら、いったん止めてやり直す
  • 録音して、自分の耳で速さを確かめる

Vocal Campのレッスンでよく見かけるのは、「揺らすことに集中しすぎて、音程の芯がぼやける」パターンです。ビブラートはあくまで”飾り”。土台の音程がまっすぐしていてこそ、揺れが映えます。だからこそ、ステップ1の「まっすぐな声」がいちばん大事なんです。

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よくある質問

Q. 練習すればビブラートは身につきますか?

身につきます。ビブラートは生まれつきの才能ではなく、練習で変えられるスキルです。ただし、喉に力が入る癖や息の支えの状態は人それぞれなので、身につくまでの時間には個人差があります。自己流で長く悩んでいる人ほど、まず自分の癖を知ってから練習すると近道です。

Q. ビブラートをかけると音程がぼやける気がします。問題ですか?

揺れ幅が広すぎることが原因です。幅をせまくして、速さを一定にする練習に戻ってください。心地よく聴こえるのは「音程の芯がちゃんと分かる範囲で揺れている」ときです。プロでも、揺れが勝ちすぎたと感じたら幅を意識的にせまくしています。

Q. もっと速く揺らしたいのですが、どう練習すればいいですか?

速くする前に、今の速さで「揺れ幅」と「音程」を安定させるのが先です。土台ができていないまま速めると、震え声になってしまいます。1秒に5回が安定したら5回半、6回、と少しずつ上げていくのが確実です。

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